そば打ち修行開始・食べる側から作る側へ・そば打ち11回を経験してわかる蕎麦の奥深さ

アクティビティ

蕎麦が好きで好きで、週末の昼はほぼ蕎麦を食べに出かけています。

いずれはそば打ちを経験したいと思い続けてきました。

念願叶って4月よりそば打ち修行を開始しました。

蕎麦を食す側から、作る側を経験し感じたことを記事にします。

 

⒈ そば打ち修行の方法

そば打ちを行うには以下のような方法があります。

①独学(本や動画で)
②そば打ち体験
③そば打ちスクール
④蕎麦職人の弟子になる

①独学(本や動画で)
そば打ちに関する指南書はそこそこあります。動画はDVDやYou tubeで見ることが出来ます。そば打ち道具を一式揃えれば直ぐにでも始められますし、自分の好きな時にそば打ちが出来ます。しかし、最初に基本をしっかり知るという意味では不安が残ります。細かなニュアンスや自分の悪い癖などに気づきずらいからです。


②そば打ち体験
グループなどで参加できる体験型のそば打ちです。最近ではそば打ち体験を行っている場所を探すサイトも充実しています。低価格でそば打ちを手軽に経験出来ますが、場所や開催時間をある程度決まってしまっているので、多忙な方には都合がつけづらいかもしれません。

そば打ち体験サイト
関東のそば打ち体験

全国のそば打ち体験検索

③そば打ちスクール
1日〜数日間に渡って、そば打ちの知識や技術を教えてくれる教室です。様々な教室があります。日数や目指す目標によって費用が変わります。
おおよそ
1日:3000円〜(高いと数万円)
5日:40000円〜
10日:70000円〜
20日:300000円〜

といった具合でしょう。(教室によって値段は変わりますのであくまで目安です)
集中的に技術を学ぶには良いと思います。対費用効果は個人の飲みこみ次第でしょう。
回数が決まっていることが吉と出るか否かも、個々に判断する必要があります。

④蕎麦職人の弟子になる
確実な技術を確実に学ぶには、最高の環境といえるでしょう。ただし、お弟子さんになる上での条件にもよりますが、場合によっては融通が一番効かなくなる可能性もあります。お店の合間に教えていただける場合もあれば、教わる代わりにお店の手伝いをする事もあるかもしれません。これはお師匠さんとの交渉次第でしょう。

複数の方法を組み合わせても良いでしょう。

 

⒉ そば打ちの概要

そば打ちの工程は大まかに分けると、水まわし→練り→のし→切りです。

①水まわし
そば粉とつなぎ(小麦粉)に満遍なく水分を行き渡らせる作業

②練り
水分が行き渡ったそば粉を練りこんで、一つの塊にする作業

③のし
のし棒と巻き棒を使って、生地を均一の厚さにのす作業

④切り
たたんだ生地を均等に切り分ける作業

水まわし

水まわし

練り

練り

のし

のし

切り

切り

各工程それぞれに勘所があります。
これは自分で体験して習得していくしかないでしょう。

つまり、理論的な事も知っているに越した事はないのですが、最終的には体で覚えた感覚が頼りになります。この体得した感覚がないと諸条件(温度、湿気、乾燥具合)に左右されてしまい、一定のクオリティーを保てなくなります。

丁寧にやれば良いというものでもありません。
時間との勝負を意識する必要があります。
時間がかかればその分、蕎麦がどんどん乾燥していくからです。

各工程をある程度の時間で終わらせなくてはなりません。
目安として1kg〜1.5kgのそば打ちは25分〜30分で終えなければならないとの事。(師匠は仕込みの際に1.5kgのそば打ちを25分程度で終えるそうだ)

ちなみに、一般社団法人 全麺協が定める段位認定制度の審査基準規程によれば、水回し、こね、のし、切りの4工程と事前準備、事後の後始末を40分間で終えなくてはなりません。(打つ蕎麦の量や繋ぎの小麦粉の量によって段位が初段から5段まである)

 

⒊ 実際にそば打ちを経験して

自分の場合は、蕎麦職人歴40年の現役蕎麦職人に直々に教えを請うています。
これまでにそば打ちを11回行いました。

すべての工程がそれぞれ難しい事は言うまでもありませんが、実際に経験してみてからの方が、その難しさを痛感します。

11回すべてにおいて全行程を40分で終えられた事は未だありません。
11回目にして45分でした。
まだまだ鍛錬と思い切りの良さが必要です。

時間を気にせず各工程を丁寧に行えば、それなりの細打ちの蕎麦が出来上がりますが、当然、蕎麦徐々に乾燥していき味は落ちます。また茹でた時に切れやすくなります。
時間を気にして、各工程を急いで済ませるとそのツケがどこかに生じます。例えば、のしを急いで甘くなると切りおわった麺は太くなります。

つまり、各工程をある程度決められた時間内に迅速に、かつ的確に行わなければ、美味い細打ちの蕎麦にはならないのです。

各工程に時間がかかる理由

①水回し
初心者ゆえに、水を入れ過ぎてはいけないと思い少しずつ加水するため時間がかかる。
また、加水のタイミングがわからずそば粉を混ぜている時間が長くなる。

②こね
初心者ゆえに、そば粉に遊ばれてしまう。要するに、ダマになってきたそば粉を一気に玉にしてこねるわけだが、手技がおぼつかずまるで蕎麦が手につかず時間がかかる。

③のし
初心者ゆえに均一に薄くのす事が出来ない。またどの部分が厚く、のしきれていないのはを把握する事が困難で、何度も繰り返しのすため時間がかかる。

④切り
初心者ゆえに細く切りたいとう一心からゆっくり丁寧に切るため時間がかかる。

以上の事から、そば打ちだけでもかなり奥が深く、クリアすべき壁は数多くある事がよくわかります。
それを一連の作業として体に覚えこませなければ、とても美味い蕎麦など打てないわけだ。

さらには、美味い蕎麦屋というのは汁も美味いものである。

汁を作るには、出汁を取り、返しを作り、それらを絶妙な割合で混合しなくてはならない。出汁の取り方や、返しの作り方、その割合で汁の味も千差万別となる。
江戸前派はやはり辛い汁に限る(これは個々の好みですが)が、それを作り出すにも、研鑽と経験が必要だろう。

もちろん美味い蕎麦は、蕎麦だけ食べても十分に美味い。しかし、蕎麦がうまければ汁はなんでも良いという事にはならない。やはり美味い汁があって、蕎麦は完成するのだ。そう考えると、蕎麦の奥深さはさらに深まります。

 

⒋ 蕎麦屋での楽しみ方が変わる

実際にそば打ち修行をし、蕎麦を打つ際の苦労を知ると蕎麦屋で感じる事が変わってきます。蕎麦を見る視点、楽しみ方が増えるといったほうが良いでしょうか。

香りが高く、細打ちで、均一な細さ、ある程度の長さ、さらにコシがある。そんな蕎麦を食べると、水回し、こね、のし、切りの各工程がいかに美しく行われているのかを想像してしまい、鳥肌が立ちます。それと同時にそのレベルにまで達するまでの苦労を感じると、その蕎麦の有り難みが増す気がします。

美味い蕎麦
啜って感じる
その苦労

そんな蕎麦が打てるようにこれからもそば打ち修行を続けようと思います。

そば打ちの資料