【留学中のメンタル管理】留学先で思い通りにいかなくても、まずは自分を褒めるべき。海外で医療者Vol.13

メンタル



海外留学という言葉の響きには、たいそう立派で煌びやかなイメージがあるものです。もちろんそういう、ポジティブなイメージがあることは良いことだと思うし、間違ってない側面もあると思います。とはいえ、実際の留学生活には、もっと泥臭い時間もあるものです。

地道な努力、根気、忍耐が求められる場面もあるでしょう。孤独を感じやすい環境であることも事実です。

従って、メンタルが不調になることもあると思います。そんな時の参考になればと、自分なりに見出した考え方を記します。

目 次
1. 留学に孤独はつきもの
2. 考える時間が増えるという恩恵
3. 留学は非日常からのスタート
4. 「まずは自分のため」そこにだけ集中しよう

1. 留学に孤独はつきもの


留学先で孤独を感じる事があるのは、至極普通のことです。慣れ親しんだ環境から離れ、文化も言葉も違う、そして親しい友人や、時としては知り合いすらいない、新たな環境に身を置くわけですから、孤独とは常に隣り合わせなのです。性格によっては、孤独と感じない人もいるでしょう。それはそれで良い事だと思います。中には、自分はメンタル強いから大丈夫!と思っていたのに、留学先で孤独を感じて、自分に失望しそうになる、なんてこともあるかもしれません。いいのです。そして失望する必要もありません。先に述べたように、孤独を感じることは、至極自然なことなのです。徐々に、氷を溶かすように、ネットワークを広げ、環境になれ、異国社会に順応していけば良いのです。

かの夏目漱石も、かつてイギリス留学をするも、部屋に引きこもっていたと言うのは有名な話です。

漱石自らが、後にその当時のことを振り返って、最も不愉快な2年だった、と記しているくらいです。

“倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり。”
(倫敦に住み暮らした二年は、最も不愉快の二年です。私は英国紳士の間にあって、狼の群れに肩をならべる一匹のむく犬のように、あわれな生活を営みました。)『文学論』「序」

その際に漱石は、無理して外に出るのではなく、部屋にこもって、根本的に文学とは何なのか?を突き詰めることを決心したといいます。

つまり、考えることに時間を費やしたのです。


2. 考える時間が増える


考える時間が圧倒的に増えるのが、留学で得られる恩恵の一つだと思ってます。

それは、たとえ引きこもりにならなくてもです。

自分自身のことを、自分の行動を、自分の未来を、俯瞰でみるような感じです。

これは日本にいると、深いところまでは出来ないことかもしれません。ゼロではないかもしれませんが、自身の経験では、明らかに留学先でその機会が圧倒的に増えました。理由は、留学先では日本で働いていた時よりも、圧倒的に時間があるからです。

なぜなら、日本では、自分がやるべきタスクに加え、とりあえずのタスクが、日々目の前に現れやすい環境だからです。勿論これは、ある程度は当然のことだし、それはそれでありがたいことでもあるのですが、中には不必要なことや、自分がやる必要のないことも含まれていたりするものです。

その点、臨床留学に出ると、状況はだいぶ変わります。所属させてもらう病院で、そもそも、臨床留学にやってくる人(自分)がいることが、前提ではないうことがほとんどだからです。つまり、留学生のためのタスク、というものが既存ではありません。言い換えれば、自分がいようがいまいが、職場は回るし、何の支障もないのが通常なはずです。そこにエキストラで自分が存在することになるので、自然発生的にとりあえずのタスクが目の前に現れる、という機会が激減します。

自分で、自発的にタスクを取りにいかなければならないということです。

従って、特に留学初期は、ある意味では時間が有り余っています。その時間の一部を、考える時間に充てるのです。自分の内なる声に、真摯に向き合うのです。

私はそうしました。とても良い時間でしたし、明らかな成長を感じました。目に見えた、わかりやすい成果がそこにある訳では無いのですが、一皮剥けた自分というものを実感しました。そして、その成長は、自分でわかってさえいれば良いのです。他人の目にも見える明らかな違いが、その時点ではなくても構わないのです。

そしてそこから、また新たなビジョンを掲げて動き出せば良いのです。


3. 留学は非日常からのスタート


留学をして海外で暮らすということは、最初は非日常に飛び込むことなのです。当然、体も心もびっくりするわけです。中には順応しきれなくて、苦しい思いをする時期もあるかもしれません。その非日常を日常に変えていかなければならないのだから、それはたいそうなことなのです。その点で言えば、とても大変な挑戦をしているのです。

思い通りにいかなくても、とりあえずは海を渡り、非日常に溶け込もうとして、もがき苦しんでいる、悩んでいる自分を労ってあげれば良いのです。こんなはずじゃ、、、とか、俺は何をやっているんだ?とか、留学にきて意味あったのかな?なんて自分を卑下したり 、焦ったりする必要はないのです。むしろ、今の自分を誇りに思えば良いのです。


4. 「まずは自分のため」そこにだけ集中しうよう


失速してきた時は、自分で自分の背中を押してあげれば良いのです。そんな元気がない時は、思い切って休めば良いのです。体を休めながらも、思いっきり悩み考えれば良いのです。頭は動きます。

頭も爆発寸前になった時は、考えることもやめてしまいましょう。最も避けるべきは、心をボキッと折切ってしまうことです。折れる寸前で立ち止まり、エネルギーを充電しましょう。若木骨折なら、回復も早いですから。

大きな成果を上げなくてはいけないと、焦る必要はありません。凱旋帰国するために何かを成し遂げなくてはと、プレッシャーに押し潰される必要もありません。そんなものなくても良いのです。先ずは、留学してよかったと、自分のためになったと、思えることが一つでもあればそれで良いのです。それは、たとえ小さいものであっても、少なくとも日本に居ただけでは手に入らなかったものなのです。プライスレスです。

誰かのためにしている留学ではありません。自分のためにしているのです。自分のためにさえなっていれば、もうそれだけで十分なのです。

医局のための留学でしょうか?違います、自分のためです。

先輩や後輩のための留学でしょうか?違います、自分のためです。

まずは「自分のため」におもきを置くのです。

自分のために、自分が納得のいくように、自分の考えで、自分のペースで、自分の留学を全うするのです。

その先に、誰かのために、医局のために、患者さんのために、あわよくば医療のために、何かを還元する機会が訪れるのだと思います。

そして”その機会”は必ず訪れると思います。

海外で医療者として働くための道!シリーズの記事はこちらから↓
http://www.chiptankoyama.com/category/海外で歯科医師として働く/

↑私がイラストを担当した抜歯本です。イラストが豊富でわかりやすい内容になっています。